フランスのAI企業Mistral AIは2026年10月20日、新しい音声AIモデル「Voxtral 3」を公開した。
Voxtral 3は、音声を文章へ変換する文字起こし、文章からの音声生成、リアルタイムの音声会話などに対応するAIモデル群である。文字起こしは日本語を含む50以上の言語に対応しており、複数人の発言を区別する機能も備えている。
今回の発表では、電話で利用者と会話しながら、情報の検索や予約といった作業を進めるAIエージェントの開発環境も公開された。
文字起こしは1分あたり0.0035ドルから利用できる。1時間分の音声なら0.21ドルとなり、会議の録音やインタビューなどを大量に処理する用途でも導入を検討しやすい料金設定である。
Voxtral 3で何ができる?
Voxtral 3には、用途に応じて複数のAIモデルが用意されている。
中心となるのは、音声を文字へ変換するSpeech-to-Textと、文章から音声を生成するText-to-Speechの2種類である。
これらを組み合わせることで、人間の話を聞いて内容を理解し、音声で返事をするシステムも開発できる。
日本語を含む50以上の言語を文字起こし
新しい「Voxtral Small Transcribe 3」は、日本語や英語、中国語、韓国語など、50以上の言語に対応した文字起こしモデルである。
例えば、会議の録音データを読み込ませて議事録を作成したり、インタビューの音声を文章へ変換したりできる。
今回のモデルでは、話者分離という機能にも対応している。これは、複数人が話している録音から、誰がどの部分を発言したのかを区別する仕組みである。
また、専門用語や人名などを事前に登録し、文字起こしの精度を改善する機能も用意された。
研究発表や技術的な打ち合わせなど、一般的な音声認識では正確に変換しにくい言葉が含まれる場面でも利用できる。
ただし、音声認識には誤変換が発生する可能性がある。特に専門用語や数字、固有名詞などについては、元の録音との照合が必要である。
リアルタイムの音声認識にも対応
Voxtral 3には、録音済みの音声を処理するモデルに加えて、会話中の音声をリアルタイムで文字へ変換するモデルも用意されている。
「Voxtral Mini Transcribe Realtime 3」は、短い遅延で音声を認識できるよう設計されている。
相手が話し終えたタイミングも判断
従来の音声認識システムでは、話している途中の音声を処理する際に、文章の区切りを判断することが難しい場合があった。
今回のリアルタイムモデルでは、声の特徴だけでなく、発言の内容も参考にして、話し終えたタイミングを判断できる。
例えば、音声で質問するとAIが返答するサービスでは、人間が話し終わる前にAIが割り込んでしまう問題を減らせる可能性がある。
Mistral AIによると、今回のリアルタイム文字起こしモデルは、500ミリ秒未満の遅延で処理できる。
実際の応答時間は、通信環境や後続のAI処理などにも左右されるため、音声AI全体が必ず500ミリ秒以内に返答するという意味ではない。
文章から自然な音声も生成できる
今回のVoxtral 3では、文章を読み上げる音声生成機能も改良された。
新しい音声生成モデル「Voxtral TTS 3」では、文章の内容に応じて、声の感情や話す速さ、強調する部分などを調整できる。
例えば、明るく案内する場面と、落ち着いた声で説明する場面で、話し方を変えられる。
また、特定の声を再現する音声クローン機能にも対応している。
Mistral AIは、30分程度の音声サンプルを使い、話し方や声の特徴を再現する専門的な機能も紹介している。
ただし、音声生成に対応する言語や、利用できる声の種類は機能ごとに異なる。日本語の文字起こしに対応しているからといって、すべての日本語音声生成機能が同じ条件で利用できるとは限らない。
また、本人の許可なく他人の声を複製する行為には、プライバシーや権利上の問題が生じる可能性がある。
電話で予約などを行うAIも開発可能に
今回の発表では、音声認識と音声生成に加えて、AIエージェントを開発するためのSDKも公開された。
SDKとは、特定の機能をアプリやサービスへ組み込むための開発ツール一式である。
会話しながら外部サービスを操作
Voxtral 3の音声エージェントでは、相手の発言を聞き取り、AIが必要な処理を判断し、外部のシステムを操作できる。
例えば、病院や店舗の電話受付システムであれば、利用者の希望する日時を聞き、予約システムで空き状況を確認して、予約を登録するといった処理が考えられる。
また、電話だけでなく、Webサイトやアプリ内の音声アシスタントにも組み込める。
Mistral AIは今回、音声通信技術を提供するLiveKitを利用して、音声認識、AIによる判断、音声生成を一連の処理として実行する仕組みを紹介している。
ただし、予約や情報検索などの機能を実際に利用するには、接続先となるシステムを開発者側で用意する必要がある。
Voxtral 3の利用料金
2026年10月21日時点で、Mistral AIはVoxtral 3のAPI料金を公開している。
APIとは、ほかのアプリやプログラムからAIの機能を呼び出すための仕組みである。
文字起こしは1分0.0035ドルから
録音済みの音声を文字起こしする「Voxtral Mini Transcribe 3」は、1分あたり0.0035ドルである。
この料金で1時間分の音声を処理した場合、0.21ドルとなる。
より高い認識精度を重視する「Voxtral Small Transcribe 3」は、1分あたり0.004ドルとなっている。
リアルタイム文字起こしの「Voxtral Mini Transcribe Realtime 3」は、1分あたり0.008ドルで利用できる。
音声エージェントは1分0.04ドルから
音声認識、AIによる判断、音声生成を組み合わせた音声エージェントAPIは、1分あたり0.04ドルから提供される。
より大規模なAIモデルを使用する構成では、1分あたり0.08ドルとなる。
なお、これらはMistral AIが公開したAPI料金であり、電話回線や外部サービスなどを別途利用する場合は、追加料金が発生する可能性がある。
Voxtral 3を試す方法
Voxtral 3は、Mistral AIの開発プラットフォーム「AI Studio」から利用できる。
AI Studioには、AIモデルの動作を試すためのPlaygroundが用意されている。
Playgroundでは、音声の文字起こし、音声生成、音声エージェント、音声クローンなどの機能を試せる。
ただし、APIは基本的に従量課金制である。Playgroundを利用する際も、料金や利用可能なクレジットを確認しておきたい。
開発者向けにはPythonなどから利用するためのSDKも用意されており、公式ドキュメントでは音声ファイルを文字起こしするサンプルコードが公開されている。
Mistral AI公式:Voxtral 3の発表

Mistral AI公式:音声APIの導入方法
文字起こしや音声AIの開発に新たな選択肢
Mistral AIは2026年10月20日、新しい音声AIモデル群「Voxtral 3」を公開した。
今回の更新では、日本語を含む50以上の言語への対応、複数人の発言を区別する文字起こし、リアルタイムの音声認識、感情表現を調整できる音声生成などが提供されている。
さらに、音声で会話しながら情報を検索したり、外部サービスを操作したりするAIエージェントの開発環境も追加された。
録音済み音声の文字起こしは1分0.0035ドルから利用でき、AI Studioでは各種モデルの動作を試せる。
会議の録音やインタビューの文字起こし、音声対応アプリの開発などでAIの導入を検討している場合は、対応言語や利用料金を比較する際の新たな選択肢となるだろう。
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