OpenAI APIに12時間のキャッシュ機能が登場。AIの利用料金を節約できるが、設定によっては逆に高くなる

OpenAIは2026年10月20日、APIのプロンプトキャッシュを12時間保持できる新しい設定を追加した。

プロンプトキャッシュとは、AIへ送信した文章の一部を再利用し、同じ内容を繰り返し処理する費用を削減する仕組みである。

これまでは標準で30分間のキャッシュが利用されていたが、今回の更新によって、12時間の保持期間を選べるようになった。

例えば、同じ指示文を使って数時間おきにAIへ仕事を依頼する場合、毎回その指示文を処理する必要が減り、APIの利用料金を抑えられる可能性がある。

ただし、12時間キャッシュは保存時の料金が高く設定されている。単純に設定を変更するだけでは、かえって費用が増える場合もある。

そもそもプロンプトキャッシュとは?

OpenAIのAPIは、開発者が自分のアプリやWebサービスからChatGPTと同様のAIモデルを利用するための仕組みである。

APIでは、AIへ送信する文章や、AIが生成した文章の量などに応じて料金が発生する。

この文章量を数えるために使われる単位が「トークン」である。

例えば、AIに長い資料を読み込ませて質問する場合、質問文だけでなく、読み込ませた資料も入力トークンとして計算される。

同じ資料を何度も送信すると、そのたびに入力料金が発生することになる。

一度処理した文章を再利用する

プロンプトキャッシュは、以前送信した文章と同じ内容が再び送られてきた際に、AIの計算結果の一部を再利用する仕組みである。

例えば、ネットショップの問い合わせ対応AIに、毎回同じ商品説明や対応ルールを読み込ませる場合を考えてみよう。

商品説明や対応ルールは変わらなくても、利用者からの質問は毎回異なる。

このとき、共通する文章をキャッシュしておけば、その部分を再利用しながら新しい質問に回答できる。

OpenAIは、キャッシュされた入力について通常より安い料金を設定している。

ただし、キャッシュされるのは主に入力の先頭から続く共通部分であり、文章の途中だけが偶然一致していても、必ず再利用されるわけではない。

新たに12時間のキャッシュが選べるように

今回の更新では、キャッシュの最低保持期間として30分と12時間の2種類を選択できるようになった。

対象となるのは、GPT-5.6以降の対応モデルをResponses APIから利用する場合である。

Responses APIは、OpenAIが提供しているAIモデルへ文章などを送信し、回答を取得するためのAPIだ。

30分キャッシュと12時間キャッシュの違い

OpenAIの公式ドキュメントによると、キャッシュの保存料金は次のように設定されている。

・30分キャッシュ:通常の入力料金の1.25倍

・12時間キャッシュ:通常の入力料金の2.5倍

これは、保存する際に発生する料金である。

一度保存した文章を再利用する場合は、どちらの設定でも同じキャッシュ読み取り料金が適用される。

GPT-5.6以降の多くのモデルでは、通常の入力料金の10分の1で再利用できる。

さらに、GPT-6.1 Solでは通常の入力料金の20分の1で再利用できる。

つまり、12時間キャッシュは保存するときの費用が増える代わりに、時間が経過しても安い読み取り料金を利用しやすくなる仕組みだ。

実際にどれくらい安くなる?

GPT-6.1 Solを使う場合を例に考えてみよう。

2026年10月21日時点で、GPT-6.1 Solの標準的なAPI料金は、入力100万トークンあたり2ドルである。

一方、キャッシュに保存する場合と、キャッシュから読み取る場合の料金は異なる。

・通常の入力:100万トークンあたり2ドル

・30分キャッシュへの保存:100万トークンあたり2.50ドル

・12時間キャッシュへの保存:100万トークンあたり5ドル

・キャッシュからの読み取り:100万トークンあたり0.10ドル

この料金を使って、具体的な例を計算してみる。

同じ文章を2時間おきに4回送信する場合

1万トークンの共通する指示文を、2時間おきに4回送信すると仮定する。

30分キャッシュの場合、各リクエストの間に2時間空いているため、標準の保持期間は終了している。

毎回新たに30分キャッシュへ保存することになれば、共通部分にかかる合計料金は0.10ドルである。

一方、12時間キャッシュを使用した場合は、最初の保存に0.05ドルかかる。

その後の3回でキャッシュを正常に再利用できれば、読み取り料金の合計は0.003ドルとなる。

つまり、4回分の合計は0.053ドルである。

この条件では、共通する指示文の処理料金を約47%削減できる計算になる。

ただし、この試算は毎回同じ共通部分がキャッシュから読み取られることを前提としている。実際の請求額には、共通部分以外の入力やAIが生成した回答の料金も加わる。

また、OpenAIは保持期間内でも毎回同じ計算結果が再利用されることを保証していないため、実際の費用は利用状況によって異なる。

12時間キャッシュで料金が高くなる場合も

12時間キャッシュは、どのような使い方でも料金が安くなるわけではない。

例えば、AIへ送信する指示文が毎回異なる場合、保存した文章を再利用できない。

その場合、高い保存料金を支払っても、読み取り料金の割引を十分に利用できないことになる。

また、短時間に何度も同じ文章を送信する場合は、従来の30分キャッシュでも十分なことが多い。

保存料金が2倍になる点に注意

12時間キャッシュへの保存料金は、30分キャッシュの2倍である。

そのため、長期間保持する必要のない文章まで12時間キャッシュへ保存すると、余計な費用が発生する。

例えば、利用者ごとに異なる会話履歴を長時間保存しても、その履歴がほとんど再利用されないのであれば、費用を削減できる可能性は低い。

OpenAIは公式ドキュメントで、共通する指示文や参考資料など、繰り返し使用する部分だけを長期間保存する方法を紹介している。

12時間キャッシュを利用する方法

12時間キャッシュは、OpenAIのResponses APIから利用できる。

対象モデルでは、APIリクエストに含まれる「prompt_cache_options.ttl」という設定を変更する。

標準の設定値は「30m」であり、最低30分間のキャッシュ保持を指定する。

今回追加された「12h」を指定すると、最低12時間の保持期間が適用される。

特定の文章だけを12時間保存することも可能

OpenAIは、キャッシュする文章の範囲を指定する機能も提供している。

例えば、AIの共通ルールや商品データは12時間保存し、利用者ごとの会話履歴は30分間だけ保存するといった設定が可能だ。

この機能では、キャッシュの区切り位置を指定する「prompt_cache_breakpoint」を使用する。

繰り返し利用する文章の末尾に区切りを設定することで、その部分だけを長期間キャッシュできる。

また、毎回内容が変わる部分をキャッシュ対象から外せば、不要な保存料金の発生を減らせる。

具体的なAPIリクエストの書き方は、OpenAIの公式ドキュメントで確認できる。

OpenAI公式:プロンプトキャッシュの設定方法

Prompt caching | OpenAI API
Learn how prompt caching reduces latency and cost for long prompts in OpenAI's API.

ChatGPTの有料プランでも利用できる?

今回追加された12時間キャッシュは、OpenAIのAPI向けの機能である。

ChatGPT PlusやProなどの月額プランとは、料金の仕組みが異なる。

例えば、ChatGPT Proに加入していても、APIで発生する料金がすべて月額料金に含まれるわけではない。

今回の12時間キャッシュも、ChatGPTの設定画面からオン・オフを切り替える機能として発表されたものではない。

そのため、普段ChatGPTで会話するだけの利用者が、今回の更新にあわせて何かを設定する必要はない。

一方、APIを使って独自のチャットボットやAIサービスを開発している人は、利用料金を削減できる可能性がある。

どのようなAIサービスに向いている?

12時間キャッシュは、長い指示文や参考資料を、時間を空けながら繰り返し使用するサービスに適している。

例えば、企業の社内マニュアルを読み込ませた問い合わせ対応AIでは、共通する資料を複数の利用者が参照することがある。

また、決められたルールに従って文章を分類するAIや、一定間隔で情報を整理するAIエージェントなどでも、同じ指示文を繰り返し使用する場合がある。

こうした用途では、頻繁に変更されない共通部分を長時間キャッシュすることで、料金を削減できる可能性がある。

ただし、共通部分が短すぎる場合はキャッシュの対象にならない。

GPT-5.6以降のモデルでは、キャッシュ対象となる共通部分に最低1,024トークンが必要である。

また、キャッシュを利用する際は、実際に何トークンが再利用されたかをAPIの利用情報から確認できる。

OpenAIはキャッシュの使用状況を確認するための管理画面も提供しているため、導入前後で利用料金を比較するとよい。

OpenAI APIの利用料金を見直す選択肢が増えた

OpenAIは2026年10月20日、Responses APIに12時間のプロンプトキャッシュを追加した。

今回の更新によって、同じ指示文を数時間おきに使い回す場合でも、キャッシュによる入力料金の割引を利用しやすくなった。

一方、12時間キャッシュへの保存料金は通常の入力料金の2.5倍である。

そのため、共通する文章を何度も利用する場合には費用を削減できる可能性があるが、再利用されない文章を保存すると逆に高くなる。

すでにOpenAI APIを利用している場合は、共通する指示文の長さや、同じ文章を送信する頻度を確認するとよい。

今回の機能追加については、OpenAIの公式更新履歴に2026年10月20日付で掲載されている。

OpenAI API公式更新履歴

Changelog | OpenAI API
See all of the latest features and updates to the OpenAI API.

OpenAI API公式料金表

Pricing | OpenAI API
Pricing information for the OpenAI platform.

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